高蔵寺駅前クリニック

心療内科、物忘れ専門外来

うつ病と普通の気分の落ち込みとどう違うのですか?

おおざっぱに言えば「うつ病の落ち込みは、長くて深い気分の落ち込み」です。具体的に言うと「落ち込み」「不安」「おっくう」の3つが14日以上続けばうつ病で、13日目までなら普通の気分の落ち込みとなっています。ただ、うつ病の人の落ち込みは、普通の人の落ち込みとは質が違い、深い気分の落ち込みで、医学的な治療によって治るものです。実際に体験した者か専門家医しかこのうつ病の落ち込みは理解し難いと思いますので、専門医を受診することをお勧めします。


自分では体調が悪いだけで、気分が落ち込むとは思わないのですが、それでも、うつ病の可能性はありますか?

うつ病は、気分の落ち込みや不安、おっくうな感じが中心症状です。しかし、最初の症状としては、体調不良、頭痛、めまい、耳なり、倦怠感、冷え、のぼせ、下痢、便秘などの身体症状がみられることはよくあります。これを仮面うつ病と言います。多くの方は、まず内科などを受診し、そこで検査をしても異常と認めず、放置している間にどんどん悪化して不眠、集中力低下、不安、焦りがひどくなり専門医を受診するケースがほとんどです。

「うつ病」と「うつ状態」はどう違うのですか?

うつ状態とは広い概念で、「うつ病」によるものから「普通の気分の落ち込み」まで含んでいます。ただ診断書には、本人の希望もあり、「うつ病」だけれど「うつ状態」とボヤかして書くこともあります。

うつ病ではなくて仕事のストレスなどの環境のせいだと思うのですが、、、

確かにその環境から抜けて、すぐに元の健康な心と体になれば、環境だけが原因だった適応障害ということになるでしょう。ただ、多くの方は環境から回避してもスッキリと元の健康な心と体に戻ることは稀です。ストレスを感じていない人はいないので、うつ状態の原因がストレスのみで、そのストレスがなくなれば、うつ状態が治ると考えるのは偏りがあると思います。多くの方はストレスに耐え切れず適応障害を起こし、それでもがんばり続けてうつ病を発症しています。うつ病は専門医に早めに受診してしっかり治療を受ければ治ります。うつ病が治れば物事へのとらえ方も変わる為、うつ病の時には耐えられなかった環境でもなんとかやりくりしていくことが可能な場合が多いです。また、うつ病で一時的に頭のキレが悪く(思考制止)なっていただけかもしれません。うつ病と認めるのは本人も家族もつらいことなので、何か心当たりのある原因のせいだと考えがちで、その原因を取り除こうとします。ただ多くの場合、そのことがかえって社会的に不利な立場になることが多いので、まずは家族で一緒に専門医を受診するのが賢明と思われます。

うつ病でなくて性格だと思うのですが、、、

病気というからには、「それまで出来ていたことができなくなる」だとか「それまでの人となりとは全く違う」などの変化がなければおかしいです。生まれてこの方、ずっとうつ状態な場合は性格を考えたほうが良いかもしれませんが、明らかに今までとは違う(ストレスの有無にかかわらず)のであれば、専門医を受診して、診断と治療方針を尋ねるのが賢明と思われます。

うつ病になりやすい性格があるんですか?

うつ病になりやすい性格は以下の3つが言われています。
① メランコリー親和性タイプ
真面目で責任感が強く、気配りしすぎる傾向にあり、自分の気分より他人の気持ちを優先し、その場が寒い雰囲気にならないよう常に取り計らうタイプです。

② 執着気質タイプ
生真面目で仕事熱心で何から何まで徹底して自分でやらなければ気が済まない完璧主義者です。

③ 循環気質タイプ
社交的で人付き合いがよく、情に深く親切。いつも陽気で朗らかな反目、気分の浮き沈みも激しく、抑うつ傾向を併せて持ちます。このタイプは躁うつ病に多くみられます。

精神科・心療内科・神経科そのものがうさん臭くて信じられないのですが、、、

これは科の特性によるものでしょう。一般に内科などの他科では医学モデルだけなので、ある特定の項目を満たせば病気だし、そうでなければ病気ではないと明らかなので医師も患者も納得しやすいです。それと違い我々の科は、医学モデルだけでなく社会モデルも診断根拠となります。社会モデルとは社会が求めているもの(共存なのか競争なのかなど)と本人の能力、個性が調和しているかどうかによって病気か健康かが変わり得るということです。つまり社会のあり方が変われば、病気であった人が治る可能性があるということです。極端な例で説明すると、心優しく人柄は良いがしたたかさに欠け、病的にある特定の事柄にとらわれて仕方のない人が、競争社会では他人の仕事まで抱え込んで潰れ、心身の不調を来たすことがあります。この人は我々の科では強迫性障害または適応障害と診断します。しかし、皆が公平で仲良く共存することが美徳とされる社会では、心身の不調を来たさず正常な人として機能することが出来る場合などです。病気となるかどうかが本人の社会レベル(仕事が出来ているか、家事ができているかなど)に拠るという奇妙な診断基準であるため、内科などの他の科とは違い、信頼性に欠けるのでしょう。

うつ病と思ってメンタルヘルス科に受診したら適応障害といわれてショックを受けました。
適応障害ということは、自分の能力が足らないということなのですか?

適応できない環境がうまく調節されて、心身ともに健康になったなら適応障害なのでしょう。ただ誰でも適応障害になり得るのです。過酷な労働環境で働いている医師ですら適応障害となる人が多くいます。戦場に行けば、ほとんどの人は適応障害となるでしょう。ですから、響きは良くないですが、適応障害と診断されたら「環境調節も考えてみましょう」との医師の助言だととらえて頂ければ良いと思われます。


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